雪のイメージ



Henning Schmiedt / Schnee


本日はヘニング・シュミート新作『Schnee』(=ドイツ語で雪の意味)
の発売日、東京は偶然にも雪でした。
今朝もちらつく雪のなか『Schnee』を聴きながら
通勤途中の公園を歩いて来ました。

5曲目あたりの
エレクトロニカなアレンジが施された曲などは
舞い散る雪の映像とも相まって
心が浄化されるような気持にもなります。



こちらは希望に満ちたような17曲目。



でも雪はきれいなイメージばかりでないですよね。
この作品には
雪がもたらす厳しさなど様々なものが
内在しているように感じます。

雨と休日でも雪にちなんだ作品の
取扱いが増えてきました。
一覧こちら

ジャケットデザインは青木隼人
昨年の来日公演の時に
ラジオゾンデとして前座を務めており、
そういったつながりもあって
青木氏の起用となったのでしょう。

ヘニング氏が東北の雪を見て作ったというこの作品。
前作『Spazieren』には
震災を受けて作った「Libelle」という曲が
収録されており、
東北への訪問は彼の胸中にも
期するところがあったのではと思われます。

ピアノに降る雪は



Bugge Wesseltoft / It's Snowing On My Piano


タイトルがすべてを語っています。

最初と最後の曲以外は
讃美歌やキャロルのカヴァーで構成されており、
厳密にはクリスマス・アルバムなのですが、
日本人に馴染みのある曲は
「What Child Is This (Greensleeves)」と
「Stille Nacht (Silent Night)」ぐらい。
その「サイレント・ナイト」も
独自のアレンジが施されたものになっており、
あのメロディは一瞬しか出てきません。
という訳でクリスマスに限らず
冬のおすすめ作品としてご紹介。

ジャケット裏には
お子さん(だと思われます)と並んで
ピアノに座っている微笑ましい写真が。
冬が長いため、北欧の人々は
家の中を快適に楽しく過ごすことに
長けていると聞きますが、
あたたかな家庭を作ることにも
長けているのではないだろうか
とも思ってしまうほど、
このアルバムには
言葉にならない愛情が
詰まっているように感じます。

雨への近似性



Elliott Ranney / an aging sailor's dream


発売前にサンプルをいただいて
初めに音だけを聴いたのですが、
自分の中の雨の日のイメージに
ぴったりな作品だなぁと思っていたら
その後ジャケットを見てびっくり。
さらにオリジナルのジャケットとは
違ったものが使われている
=国内盤制作者がこのジャケットを選んだ
ということに、二度びっくり。

傘をさして寄り添う男女が
海辺を歩いているというこのジャケットは、
今回、国内盤としてリリースされる際に
オリジナルと差し替えられたものです。

ジャケットの原画は写真なのですが、
renquedochanというスペインの
アーティストの作品だそうです。
Flickr



上の画像はレーベルの方に拝借したもの。
写真にレトロな加工をして
絵画作品のように仕上げられています。
「雨は言葉の意味をも変える」という
一文が印象的でもあります。

ブラジル音楽(ボサ・ノヴァ)の
要素を取り入れたポップスという点で、
音楽マニア的に言えば
マイケル・フランクスや
ケニー・ランキンといったあたりに似たイメージ。
彼らよりも、もう少し繊細。
数曲入っているギターメインの
インスト曲もいい雰囲気です。

雨はやわらかなブランケットのように
あなたを優しく包んでくれることでしょうか。
このアルバムから生まれるイメージが
私や制作者側のものと近かったらいいなぁと
思っています。

ばんりしらいわ


一見、武骨な印象の言葉選びの中にも
繊細なセンスが見え隠れする。
白岩萬里(本名だそうです)のソロ・アルバムは
そんな歌が詰まった作品です。

引きこもって外界と関わらない
というような暗さは無く、
どこかひょうひょうとして、
ときどき真面目になって心に響く一言を発して、
「じゃ。」と言って去っていくような。

COINNのメンバー(エレキギター担当のロックな兄ちゃん的存在←個人的見解)
でもあり、
2曲目「時間がたてば」はCOINNでも演奏されています。
COINN / Hello!Hello!Hello!

雨が静かに降ってきて、
コーヒーを淹れよう、
外には出ないでいよう、
と歌われる1曲目「こころとあめ」が
本当に静かな雨に合うだろうと思わせる曲で、
私は軽くK.O.されたような心地よさに包まれました。

独特のちょっと癖のある歌声。
少しセンチメンタルな気持ちに浸りたい、
平穏な時間の流れに浸りたい、
というときに、付き合いたい1枚です。


banri shiraiwa


Dear Rain



Mari Kalkun / Vihmakono


さて、5月18日に発売されました
マリ・カルクンのセカンド・アルバム『Vihmakono』です。
アルバムタイトルを英語にすると『Dear Rain』だそうです。
店主、寺田がライナーノーツを書かせていただきました。
ライナーを書くとブログで書きたいことが
あまりなくなってしまうのが難点でして、
この記事も一週間遅れとなって
ようやく書いております。

とにかく、もう何度も聴いています。
繊細な音楽ですが、きめ細やかな、とか神経質な、
という感じの繊細さとは違った丁寧さに満ちています。
マリ・カルクンは20代半ばのまだ若い女性ですが、
エストニアの伝統音楽を熱心に研究しています。
それに自分なりの(現代的な)センスを加えているのですが、
そのバランスが素晴らしいと感じました。

過去から伝わるものを大事にする。
その気持ちはたとえば
伝統的な職人芸を今に生かすような、
真摯で丁寧な民芸作品に近い気もします。
「手仕事」や「ものづくり」に興味のある方にも
聴いていただきたいアーティストです。

今回、Panaiレーベルの担当者さんに
このアルバムの国内盤化の話を聞き、
ライナーを担当することが決まったときに強くお願いしたのが、
歌詞の対訳を付けることでした。
マリ・カルクンにエストニア語(のさらにマイナーな言語)を
まず英語に訳してもらい、
それをさらにPanaiさん側で日本語に訳してもらいました。
対訳を付けるというのはひと手間かかるので、
付けないCDも多いのですが、
手間を惜しまず作業に取り掛かっていただいた
Panaiのスタッフの皆様に感謝いたします。
エストニアの詩人たちの作品から引用された
歌詞をぜひご覧ください。

9曲目の歌詞は「ムーミン」からの引用、と
レビューにも書きましたが、
ムーミンはフィンランドの物語で、
エストニアと海を隔ててすぐにあるこの2国の
共通性をここにも見ることができます。
エストニアとフィンランドは文化的にも
とても近い国だそうでして、
ソ連から独立した国とは言っても
むしろ北欧の文化圏と考えたほうがしっくりくるようです。

あとひとつ、ここでお伝えしたいことがあります。
当店でも限定数入荷してもうすぐに完売してしまった
2007年のファーストアルバム『Uu tulok』が、
もしかしたら同じPanaiから国内盤リリースされるかもしれません。
この『Vihmakono』の売れ行き次第ですので、
ぜひ皆様まわりに宣伝をお願いいたします。


夕暮れの海?で歌う
マリ・カルクン。
美しい映像です。



------
2011年10月追記

ファーストアルバム『Uu tulok』が
10月12日に国内盤リリース決定いたしました。
Mari Kalkun / Uu tulok

楽しい雨もある



Lupeux / Unicorn


ちょうど先週の土曜日でしたが、
降ったり止んだりの不思議な天気の日がありました。
横殴りの雨かと思ったら、
急に止んだり。
雨は降り続けていながらも空が明るくなったり。
気まぐれな天候に振り回されて、
迷惑を通り越して楽しくなってくるような、
そんな雨の日でした。

楽しい雨の思い出ってあるんじゃないでしょうか。
小学校の帰り道に水たまりで遊んだ記憶だったり。
雨あがりに綺麗な虹を見たり。
大人になってからでも、例えば新しい傘を買ったときだったり。

雨の街に傘をさした少女という
ジャケットだから、
という理由もありますが、
この作品はそんな楽しい雨の日に
似合うのではないでしょうか。

雨と休日のセレクトとしては
ビートが強いほうの作品です。
ただ、試聴ではわかりにくいのですが、
力押しの作品ではありません。
ふっと静かになる部分や小さな音への配慮といった
その音作りの繊細さが
このアルバムの最大の魅力だと思います。

Lupeuxの正体は果たして公開されておりません。
ライヴも行わないそうです。
でも正体がわからないほうが
純粋に音と向き合える、
ということもあります。



惑星から来たザジ



zazie von einem anderen stern / REGEN:TROPFEN


「zazie von einem anderen stern」を訳すと
「惑星から来たザジ」で良いでしょうか。
ちょっと硬い訳ですが。

ここではないどこかからやって来た
ザジという名の女の子。
彼女が見つめた地球のある家の、
静かな日常が描かれているかのような作品と言えるでしょうか。
繊細な感性を持って見つめた(聴いた)
細やかなサウンドスケープ。
小さな音のひとつひとつが
彼女の思考であり、
少女が持つ夢の世界のような、
秘密の花園的な刺激に満ちた作品だと感じます。

映画『アメリ』の音楽で知られる
ヤン・ティルセンからの影響も受けていると思われます。
グロッケン(鉄琴)の使い方や
ミニマルなピアノのメロディなど、
ヤンと近い部分が多いと感じます。

『アメリ』に内在するダークサイドを含めて
あの作品を好きだという方には
是非聴いていただきたい作品です。
ジャケットのデザインも秀逸ですね。
水玉ワンピースも実にキュートで
素敵な女性だなぁと見とれてしまいます。

レインコートと地図


the innocence mission / my room in the trees

音楽で世界が救えるか、と言われたら
音楽だけでは無理だと言いたい。
音楽を取り囲む多くの人たちによって
何かが救われていくのだろうと思います。

少しだけ、気分が和らぐ。
少しだけ、心が落ち着く。

音楽そのものの力はその程度だと思うし、
その程度だから本当に「力」なのだと思うのです。

イノセンス・ミッション。

人ひとりの心に平穏と安らぎをもたらす
少しだけ、の音楽。

これから何度、その「少しの力」に救われるか、と
新作が出るたびに楽しみなのです。

長靴にレインコート、の内ジャケットも可愛い、
雨の日に聴きたい『my room in the trees』。

------

同時発売の8曲入り作品
『STREET MAP』。

the innocence mission / STREET MAP

イノセンス・ミッションの作品の中でも、
おそらくもっとも静かなアルバムです。
トータル23分ほどの短い作品ですが、
その繊細な音作りは、
聴く者のすぐそばに居る感じ、と言えるような
バンドの本質が見えてくる作品です。
新作『my room in the trees』とも
また違った想いが込められた作品です。

『STREET MAP』というタイトルは、
道しるべのようなものと解釈しましたが、
皆さんはいかがお思いになるでしょうか。

カレン・ペリスの歌声も素敵なのですが、
歌の入っていないインスト曲(3曲収録)も、
他のどのバンドにもないような魅力を持っています。


どちらも歌詞対訳付きです。
歌詞カードを見て
じっくりとお聴きいただければと思います。

6月のある日


本日アップした2点には、
同じSTARNETというレーベルから
リリースされたということ以外に、
重要な共通点があります。
それはどちらも2009年の6月に録音された作品
という点です。

試聴ではわかりにくいかもしれませんが、
どちらの録音にも雨の音が混じっています。
録音の最中に偶然降ってきたのだそうです。



畑中正人 / House of Voice

録音したピアノのメロディを
コンピューターを使って再構築していく、いろのみ『ZONE』。
即興演奏による畑中正人『House of Voice』。
どちらもピアノがメインの作品でありながら、
作曲のプロセスの違いもあり、
似ているようで似ていません。

この種類の作品には
あまり多くの説明を付けないほうが
良いと考えます。

アルバム制作の過程を知りたい方は
各アーティストのブログに
詳しく書かれてありますので、
そちらをご覧ください。

いろのみ
いろのみ

畑中正人
畑中正人(こちらにはレコーディング風景の動画も)


名盤の罠


Nara Leao / Dez Anos Depois

「名盤の罠」とは大げさなタイトルですが、
「名盤と言われてるから」という理由だけで
そのアルバムしか聴かないということには、
弊害がある場合が多い気がします。

ボサ・ノヴァの女神(ミューズ)と呼ばれるナラ・レオン。
その理由は、50年代のブラジルでボサ・ノヴァが生まれた
裕福な階級のコミュニティの中心にいたからです。

実際彼女がボサ・ノヴァを歌ったアルバムは、
すでに世界的なボサ・ノヴァ・ブームが
下火になろうとしていた1971年に録音された
この『美しきボサ・ノヴァのミューズ』と、80年代の数枚と、
数えるほどしかありません。
事実、ナラ・レオンはボサ・ノヴァの
(当事者以外の)熱狂的な盛り上がりに辟易し、
むしろ反発すらしていた時期がありましたし、
軍事政権が台頭してきたブラジルの政治的影響もあり、
いつも「愛と平和」に満ちたボサ・ノヴァばかりを
歌っていたわけではありません。

ボサ・ノヴァの名盤だからといって、
この作品だけを聴いてナラ・レオンのこと、
ひいてはボサ・ノヴァのことを知った気になるのは、
ちょっと危険な気がします。
アルバムが制作された背景を知っておくべき作品があると思いますが、
『美しきボサ・ノヴァのミューズ』はまさにそういった作品です。
原題は『10年後』という意味。
邦題の『美しきボサ・ノヴァのミューズ』は
まったく違ったタイトルであるとも言えます。
それまでボサ・ノヴァのアルバムを作らなかった彼女が、
この時代に、ブラジルではなくパリで作った
といった事実すべてが作用して、
このようなボサ・ノヴァらしからぬ雰囲気の
アルバムが出来上がったのでしょう。

MPB(ブラジル・ポピュラー音楽)の激動の時代を生きた、
ナラ・レオンというひとりの女性について
詳しく知りたいと思われた方は、
『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実』
という本をぜひご一読ください。
著者はブラジル音楽に精通したジャーナリスト、セルジオ・カブラル。
鎌倉のカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュのマスター、
堀内隆志氏の監修(翻訳は荒井めぐみさん)による、
愛情たっぷりの1冊です。

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