なぜCDか


CDが売れなくなって…という話題は
もう古くなっているように感じます。
売れなくて当たり前。
もともとそういうものだったのでしょう。


牧村憲一/津田大介 著
「未来型サバイバル音楽論
"USTREAM,twitterは何を変えたのか"」

を読みました。

今後の音楽制作、音楽業界の在り方について、
過去と最近の事例を引用しつつ
議論が展開されています。
USTREAM、twitterなどの
アップデートな話題は
その時代時代で語られることであり、
すぐに流行り廃りがあることなので
ここでは触れません。
私が面白く読んだのは、
牧村氏の「制作サイド側からの」業界話です。
牧村憲一氏は、知る人ぞ知る
日本音楽業界の重鎮です。
細野晴臣とのノン・スタンダード・レーベルや、
フリッパーズ・ギター、
そしてトラットリア・レーベルを
手掛けたことで知られます。
牧村氏が掲げている
小さなレーベルをどんどん作るべき
という意見は、
メインストリームであるJ-POP以外のジャンルで
もうすでに活発になっている動きです。
具体的に雨と休日で取り扱っているもので言えば、
scholeKitchen.などのレーベルや青木隼人のように、
規模が小さかったり自主制作を基本にしながらも
知名度や影響力を少なからず持っている、
といった例があります。
彼らは、レーベルでありつつアーティストであり、
自身のレーベルサイトでは音源の販売も行っています。


この本の内容とすこしかぶりますが、
普段思っていることをまとめたくなりました。

CD不況という話題に関しては、
どうして売れなくなったのか、
という論点より
どうしてあんなに売れたのか、
という論点のほうが的確な気がします。
CDの利便性、バブル経済、CMタイアップ、カラオケ…
いろんな要素が組み合わさって偶然に、
何十万枚、何百万枚と売れた時代があった。
それだけのことではないのでしょうか。

今はもう、ひとりで何でもできる時代ですし、
音楽を聴くことひとつを取っても
いろんな選択肢があるので、
各々それを取捨選択するのが
自然になっています。
そこでいちばん大事になってくるのは
何を選択するか、という点でしょう。
自分にとってどれが良いのか、
理由や意味をしっかりと持った上で選択すること。
選択したものに自分なりの責任を持つこと。

雨と休日はCDを売ることを選択しているお店です。
基本的にCDだけを売るお店です。
(音楽に関わる書籍は少量扱います)
アナログレコードでもなく、DVDでもなく、
Tシャツなどグッズも一切売りません。

これは、今現在リリースされるCD作品に
魅力を感じるからに他なりません。
CDメディアは消えゆくものであると思いますし、
CDというメディアそのものには
それほど魅力を感じていません。
CDはリッピングせず必ずCDプレイヤーで聴け
と強制しているわけでもありません。
個人的にはLPも聴きますし、iPodを愛用しますし、
ダウンロードで曲を買うこともします。

CDの最大の魅力は
パッケージ作品であるという点に
尽きるのではないか、
と考えるようになってきました。
CDが消えれば、
パッケージ作品としての音楽娯楽商品が
消えるのではないかと思います。
アナログレコードは生き残ると思いますが。

CDを1枚まるまる通して聴くという時間。
ジャケットの雰囲気を味わう。
そういったことを
懐古主義ではなく楽しむこと。
その選択意思が
とても大切なことだと感じています。
CD不況真っただ中の2009年に
あえてCDショップをオープンしたのは、
CDを売ることが衰退している時期だからこそ
まだまだ良いCD作品があることを
紹介したいからでした。


「未来型サバイバル音楽論」は
音楽評論本ですので、
万人にお薦めできませんが
ご興味あれば一読を。
音楽業界に長く携わった牧村氏と
ネット社会に精通する津田氏との
(どちらか一方では無い)
ふたりの議論である点が
面白く読めました。

(ちなみに、どこかに書こうとは思っていたのですが、
アーティスト名には敬意を持って敬称を付けておりません。
細野晴臣、ならそのままですが、
名字だけだったら細野氏や細野さんと付けます。
悪しからず。)

「ジャンル」について



当店では一般のCDショップのように
ジャンルで分けた売り方をしていません。

ジャズやクラシックなどジャンルで分けることはわかりやすいのですが、
多くの人はジャンルで音楽を聴いているわけではないと思うのです。

ジャンルで分けることはレコード業界の都合でもあるし、
「これはジャズである」「ロックである」と決めつけてしまうことから
見えなくなるものが多い気がします。
それを取っ払ってしまったところから
新たな発見が生まれる可能性って高いんじゃないかな、と思っています。

また、近年ではジャンルで括ることが無駄であるように感じる作品が
増えてきたように感じます。
CDの売り上げがピークに達した頃から
どんどん聴く側の趣向が細分化されていったのではないでしょうか。
それに呼応するかのように作り側も細分化され、
大手レコード会社は縮小し、小さなレーベルは増える一方です。

便利さを求めてジャンル分けしたのに、
逆にわかりにくくなってしまっているのかもしれません。

そんな想いからジャンル分けをしていません。
品数は少ないですが幅広いジャンルの商品を揃えていくつもりです。
ジャンルを超えた横のつながりが生まれていく楽しさを
伝えていけたらと思っています。

それでもコメントの中などにどうしても便宜上ジャンルを
書いてしまうことがあるのですが、
スペースの都合上わかりやすさを出すためであることを
わかっていただけると助かります。

代わりというわけではありませんが、
当店ではコンセプトのひとつとして
[day]、[night]そして[rain]というカテゴリーを設けています。
その言葉のとおり、昼、夜、雨のときに合う音楽を
提案していきたいと考えています。
もちろんこれも店全体のコンセプトと同じく主観的なものです。
いつ何時に何を聴こうが勝手じゃない、と思われるのもごもっとも。
あくまで判断基準として捉えていただければと思っております。

そこから未知の音楽との出会いの喜びが生まれることを願って。

「穏やかな音楽」について


お店を作るにあたって以下のような
ポリシーを持とうと考えていました。
これらは私がかつて勤めていたチェーン店の大きなCDショップでは
実現が難しかったことも多く含まれています。

隅々まで管理が行き届いたお店じゃないといけない。
そのためには在庫を大量に持ちすぎてはいけない。
すべての商品に責任を持った仕入れと販売をしたい。
つまり売れ残りなんてものが存在してはいけない。
いかに愛情を持ってその仕事に取り組んでいるか、ということを
お客様は敏感に感じ取ることができます。

ジャンルで特化したお店はありきたりだろう。
少なく厳選されたセレクトができる基準となるコンセプトとは…
と考えたときに、
既存のセレクトショップよりももっと潔さが必要なのではないかと考え、
「ゆっくりとした音楽」「穏やかな音楽」
というコンセプトを思いつきました。

もともと自分が好んで聴く音楽がそうだったというのがあります。
しかしもっと大きな理由として、
結局キャッチーで力ずくな音楽が売りやすい、
静かな音楽は埋もれてしまう、
という長年のショップ経験に対する気持ちから
あえてこのコンセプトでいこうと決めました。

「雨と休日」という店名には
雨の日や、休みの日に聴いたら気持ちいいだろうな
と感じる音楽を集めたいという想いを込めました。

店名の下にサブタイトルのように付いているコピー、
「quiet, slow & gentle music for ordinary day」。
「quiet」は「silent」ではありません。
似ていますが「silent」は無音状態を指します。
無音であることは緊張感を伴います。
静かである=平穏である。
そこには少しだけ音が鳴っているのだと思います。
「slow」は日本語で言う「ゆっくり」とは若干違います。
「ゆっくり」には精神的な余裕が含まれますが、
「slow」は「遅い」という物理的な意味が強いです。
これは単純にスローテンポの意味で使っています。
「gentle」はそのまま「優しい」ですが、
もっと深い意味があると思います。
とても柔らかい言葉ですが意志の強さを伴っていると思います。
しとしとと降る雨を「gentle rain」と表現するのも好きです。


*この記事は思いついた時に更新されます

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