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あの国あの時代



ウィーン、わが夢の町 田辺秀樹(p)


19曲目「ウィーン、わが夢の町」。
この曲が持っている魅力を
どう言葉にすればよいでしょうか。
文字で表そうとする前に、
このメロディに胸を熱くさせられます。
他のどの国のどの時代の音楽の性質とも違う、
純粋に甘い音楽を求め、
純粋に美しい音楽を求めた結果。
それを可能にした時代性が
ウィーンという街にあったのでしょう。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて
ウィーンで生まれた、いわゆる軽音楽的なワルツやポルカ。
社交場で貴婦人たちが気軽に楽しんだダンス音楽。
あるいはカフェで歌われ、
街の人々がワインやビールを飲みながら嗜んだ音楽。

演奏されている田辺氏は
ドイツ文学者であり、一橋大学名誉教でもある方。

ご本人が書かれているライナーノーツにもありますが、
もともとは歌の作品で、
ピアノ伴奏のヴァイオリンなどに編曲されることはあっても
こういったピアノ・ソロでの演奏
さらに録音は希少価値のあるものです。

この時代の曲を集めたCDは非常に少ないです。
なぜでしょうか。

ひとつは「クラシック音楽」として
「低俗」「凡庸」であるという理由。
わざわざこんなライトな音楽を
歌って(あるいは演奏して)録音したりしない。
同様の理由でオペレッタ(オペラのより庶民的な
も長らく顧みられないものでしたが、
CDができてからはオペレッタ文化に
注目する音楽家が増えてきている印象です。

もうひとつは「無名」である、という理由。
ヨハン・シュトラウス2世のような例外はありつつも、
このCDに収録されている多くの曲の作者は
いわゆる流行作曲家のような扱い。
曲は有名であっても
あくまでその曲のみで知られる、というのが通例。
似たような曲を作り続けても
やがて単なる時代の流れに埋もれて個々の評価をされなくなる。
流行歌は流行歌の楽しみがあり、
気楽さがあり、街の人々の喜怒哀楽がある、
そこが魅力であって、
それ以上の薀蓄は要らないというもの。

まぁ、聴いてごらんなさいよ。
…という具合がいいのかもしれませんね。


 
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